玄関の引き戸が持つ、構造的な防犯上の弱点。しかし、それを嘆く必要はありません。いくつかの効果的な後付けの鍵を正しく選び、設置することで、その弱点を補って余りある、強固なセキュリティを築き上げることが可能です。空き巣に「この家は侵入が難しい」と諦めさせるための、具体的な対策をご紹介します。まず、最も基本的かつ強力な対策が、「ワンドアツーロック」、つまり主錠に加えて「補助錠」を増設することです。空き巣は、侵入に五分以上かかると、約七割が犯行を諦めると言われています。鍵が二つあるというだけで、侵入にかかる時間は単純に倍になり、視覚的な防犯効果も絶大です。引き戸用の補助錠として特にお勧めなのが、「面付(つらつき)引戸錠」です。これは、ドアの室内側の面に取り付ける、後付け専用の錠前で、デッドボルト(かんぬき)が、ドア枠に取り付けた受け座(ストライク)にがっちりと食い込み、こじ開けに対して非常に高い抵抗力を発揮します。特に、デッドボルトが鎌のような形状をした「鎌錠」タイプは、バールなどによる攻撃に対して極めて強く、引き戸の防犯性を飛躍的に高めることができます。次に、既存の主錠の見直しも重要です。もし、現在お使いの錠前が旧式の簡易なものであれば、ピッキングに強い「ディンプルキー」タイプのシリンダーを備えた、最新の「引違戸錠」や「戸先鎌錠」に交換しましょう。シリンダーを交換するだけでも、不正解錠のリスクを大幅に減らすことができます。さらに、ガラス破り対策として、窓用の「補助錠」も有効です。サッシの上下に取り付け、クレセント錠(窓の中央にある鍵)を開けられても、戸が動かないようにするものです。そして、これらの物理的な鍵と合わせて導入したいのが、窓やドアが開くと警報音が鳴る「防犯ブザー」です。大きな音は、侵入者を威嚇し、犯行を断念させるのに非常に効果的です。これらの対策を組み合わせ、多層的な防御壁を築くこと。それが、引き戸の玄関を守るための、最も賢明な戦略なのです。
引き戸の防犯性を飛躍させる後付けの鍵