車のエンジンを切ってドアをロックした後、ふとメーターパネルを見ると、鍵の形をした赤いランプが点滅している。初めてその光景を目にした時、「何かの故障だろうか」「バッテリーが上がってしまうのでは」と、不安に感じた方も少なくないのではないでしょうか。しかし、ご安心ください。この鍵マークの点滅は、ほとんどの場合、故障や異常を知らせる警告灯ではありません。むしろ、その逆。あなたの愛車が、盗難から身を守るために、正常に警戒態勢に入っていることを示す、頼もしい「お知らせランプ」なのです。この点滅している鍵のマークは、「イモビライザー」という、電子的な盗難防止システムが作動中であることを示しています。イモビライザーとは、正規のキーに埋め込まれた電子チップが持つ固有のIDコードと、車両本体のコンピューターに登録されたIDコードを、目には見えない電波で照合し、一致した場合にのみエンジンを始動させるという、高度なセキュリティシステムです。たとえ、ピッキングなどで物理的にドアを開け、エンジンキーをシリンダーに差し込んで回したとしても、この電子的な「合言葉」が一致しなければ、燃料の供給や点火回路が電子的にカットされ、エンジンは決してかかりません。そして、この鍵マークの点滅は、駐車中に、周囲に対して「この車はイモビライザーで守られていますよ」と、無言のうちにアピールする役割を担っています。これにより、潜在的な窃盗犯に対して、「この車を盗むのは困難だ」と思わせ、犯行を未然に諦めさせるという、視覚的な抑止効果が期待できるのです。つまり、あのチカチカという光は、あなたの車が、眠っている間も、忠実な番犬のように、静かに、しかし力強く、その目を光らせている証拠。それは、不安の種ではなく、むしろ、大きな安心感を与えてくれる、頼もしい光のサインと言えるでしょう。