あれは一月のとても寒い夜のことでした。仕事で遅くなり、ようやく自宅のマンションに辿り着いた私は、早く温かいお風呂に入って眠りたいという一心で、鞄から鍵を取り出しました。ところが、いつも通り鍵穴に差し込もうとした瞬間、何とも言えない違和感に襲われました。鍵が半分ほど入ったところで止まってしまい、奥まで入らないのです。これまで一度も不調を感じたことがなかったため、私は自分の差し込み方が悪いのかと思い、何度か抜き差しを繰り返しました。しかし、事態は良くなるどころか、ついには鍵が全く入らなくなってしまったのです。これがいわゆる鍵故障というものかと、深夜の静まり返った廊下で一人、私は途方に暮れました。気温は氷点下に近く、吐く息は白く凍りついていました。このまま外で夜を明かすわけにはいかないと焦った私は、手持ちのスマートフォンで鍵が開かない時の対処法を必死に検索しました。検索結果には、鍵穴に異物が詰まっている可能性や、冬場であれば結露が凍結している可能性などが書かれていました。私は自分の息を鍵穴に吹きかけて温めてみたり、鍵についている汚れを丁寧に拭き取ってみたりしましたが、状況は一向に変わりません。焦りが募り、つい力任せに鍵を押し込もうとしたその時、嫌な金属音が響きました。あやうく鍵を折ってしまうところでした。ここで無理をしたら本当に取り返しのつかないことになると、私はようやく冷静さを取り戻しました。結局、二十四時間対応の鍵修理業者に電話をかけることにしました。電話口のオペレーターの方は非常に落ち着いた声で、状況を詳しく聞いてくれました。到着まで約四十分かかると言われ、私は近くの深夜営業のコンビニエンスストアで暖を取りながら待つことにしました。あの時の心細さと、自分の家の扉が開かないという不条理な感覚は、今思い出しても胸が締め付けられます。ようやく到着した作業員の方は、特殊なライトで鍵穴を覗き込むと、すぐに原因を特定してくれました。なんと、鍵穴の中に小さな砂利のようなものが入り込み、それが奥で噛み込んでいたのです。強風で飛ばされたゴミが、偶然にも鍵穴という針の穴のような隙間に飛び込んでしまったようでした。作業員の方は専用の洗浄液とバキュームを使い、ものの十分ほどでその異物を取り除いてくれました。再び鍵を差し込むと、驚くほど滑らかに、そしてカチリという心地よい音を立ててドアが開きました。あの瞬間の安堵感は言葉では言い表せません。作業員の方は、鍵の動きに少しでも違和感が出たら、それは故障のサインだから放置しないようにと、丁寧なアドバイスをくれました。また、今回のようなケースは稀ではあるものの、日頃から鍵穴の掃除を心がけることで、ある程度は防げると教えてくれました。深夜の作業だったため、費用は決して安くはありませんでしたが、冷たいドアの前から救い出してくれたプロの技術には、心から感謝の気持ちでいっぱいになりました。この出来事以来、私は玄関の鍵をいたわるようになりました。一ヶ月に一度は鍵穴を掃除機で吸い、鍵自体も柔らかい布で磨いています。