サッシのメンテナンスを専門とするベテランの職人に、一般の人がサッシの鍵を交換しようとした際によくある失敗についてインタビューを行いました。最も多いトラブルは、やはりサイズの計測ミスだと言います。サッシの鍵は、見た目が似ていてもメーカーごとにミリ単位で設計が異なります。特に引き寄せ寸法という、鍵の芯から引っかかる部分までの距離を間違えると、窓が閉まらなくなるか、逆にスカスカで防犯にならない状態になります。職人は、定規を当てる位置を正確にするため、鍵を一度外してから、ネジ穴の中心を通るように計測することを勧めています。 また、職人が声を大にして警告するのが、サッシ内部の裏板問題です。サッシの縦枠の中には、クレセント錠を固定するためのネジ受け板が入っていますが、これは枠に固定されているわけではなく、ネジの力だけで挟み込まれていることが多いのです。何も考えずに二本のネジを抜いた瞬間、カチャンという絶望的な音とともに裏板が枠の底へと落ちてしまいます。こうなるとサッシを完全に分解して取り出すか、別の場所に穴を開けてネジを切るしかなく、プロを呼んでも多額の工賃がかかる事態に陥ります。職人は、必ず片方のネジを残し、仮のピンで板を支えながら作業を進めるという、プロの技を伝授してくれました。 さらに、取り付け後の調整についても重要な指摘がありました。多くの人は、新しいサッシの鍵を取り付けただけで満足してしまいますが、実は受け側の金具との位置関係を調整するプロセスが最も重要だと言います。窓を閉めた時に、サッシ同士がグッと引き寄せられる力が働くように調整することで、初めてサッシ本来の気密性能が発揮されます。レバーを回すのに少し抵抗があるくらいの状態が理想であり、軽すぎると隙間風の原因になり、重すぎると今度は鍵の寿命を縮めてしまいます。この絶妙なバランスを見極めるのが、プロとアマチュアの差であると彼は語ります。 最後に、交換する鍵の選び方についてもアドバイスをもらいました。最近では安価な海外製の輸入品も流通していますが、やはり国内メーカーのサッシには、そのメーカーの純正品か、国内の老舗鍵メーカーが作っている万能型を選ぶのが一番だと言います。金属の質やバネの耐久性が全く異なり、数年後のガタつきの出方に大きな差が出るからです。サッシの鍵を交換することは、単に窓を閉める道具を取り替えることではなく、建物の性能を維持するためのメンテナンスであることを忘れないでほしい。その言葉には、長年サッシと向き合ってきた専門家ならではの重みがありました。
専門家に聞くサッシ鍵交換で失敗しないための重要ポイント